NTT Comら3社、建築現場の生産性向上を目指し協業–2024年問題への対応をけん引
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NTTコミュニケーションズ(NTT Com)と竹中工務店、清水建設は7月11日、建築現場のDX実現に向けた協業を開始した。同日に開催した説明会では、NTT Com 常務執行役員 ビジネスソリューション本部長の小島克重氏、竹中工務店 専務執行役員の丁野成人氏、清水建設 専務執行役員 山﨑明氏が登壇し、今回の協業と提供するサービスについて説明した。
建設業界は、2024年4月に適用される時間外労働の上限規制や就業人口の減少・高齢化などの課題に直面しており、DXによる建築現場の生産性向上が急務だという。この協業で3社は、建築現場で行われる工程管理やリソースの手配、作業指示などに必要なさまざまな施工管理業務について、工程表の計画から作業日報までの情報のデータ化、フローやプロセスをデジタル化して、これらを連携させることで工程と作業をつなぐ施工管理業務全体の生産性向上に取り組む。
これまで、建築現場の施工管理業務に関するITソリューションの多くは、業務ごとに特化しており、ソリューションの間での実用的なデータ連携ができない状況にあったという。工程表には、工事全体の大きな流れが記載されるのに対し、作業日報には各工程の中で行われる作業の人数や具体的な作業項目などが記載されている。このように、工程表と作業日報で扱う情報の粒度に差異があることがDXを阻む最大の要素になっていた。
協業ではこのような課題を踏まえ、工程表から作業日報までの各施工管理に関わるデータを情報粒度の差異を調整しながら実用的にデータを連携することで、施工管理業務のDXを実現し、施工管理業務にかかる人や時間において約3割の削減を目指すという。
具体的には、「デジタル工程アプリ」「作業調整・手配アプリ」「作業日報アプリ」「絵工程アプリ」「朝礼アプリ」――の5つのアプリケーションのデータを連携させる。まず、デジタル工程アプリに工事種別や施工量、人員などさまざまな属性情報を付与し、工程情報を高度化する。この工程情報のデータを作業調整・手配アプリに連携することで、1つの工事を作業レベルで分解し、作業に必要な詳細情報や協力会社、作業場所、施工計画を入力して作業の実行に必要な調整や手配を行う。
次に作業情報のデータを絵工程アプリに連携する。絵工程アプリは、紙に手書きした平面的な位置情報や配置情報を作業に関連させて視覚化し、手配を行う。尺度・時間の概念を持った作業スペースの図形を配置することで、実スケールでの調整や現場空間の認識を向上させる。また、作業情報にひも付けて搬出入やクレーンなどの予約ができる。
朝礼アプリでは絵工程アプリのデータ連携により、平面的に視覚化した工事現場や周知事項を朝礼コンテンツとして作成し、現場に設置したサイネージへの投影やタブレット端末で確認ができる。これにより、時間や場所にとらわれない朝礼ができるという。
作業日報アプリでは、作業調整・手配アプリのデータを取り込み、人口や数量の実績を登録する。作業日報から実績データを取得し、予定と実績の比較管理を行うことで工程計画の精度向上につなげられるとしている。 既に幾つかのアプリケーションをリリースしており、工程管理データの連携サービスとしてのリリースは2023年度中を予定しているという。
小島氏は協業を通して、施工管理業務のDXを実現するソリューションの構築と建築現場への実装・定着化を図るとしている。将来的には工程表の作成やリソースの手配、作業指示などが半自動的に行われる施工管理を目指すという。
3社はワーキンググループを組成し、工程管理のデータ連携について検討を進め、工程管理の業務プロセス変革を進める。竹中工務店では、連携させる工程管理データを整理し、自社における現場での取り組み推進を行う。また清水建設では、竹中工務店の取り組みと同様の役割に加え、日本建設業連合会の「建設工事適正工期算定プログラム」との連携を調整する。そしてNTT Comは、現場利用の定着を目指してシステムをアジャイル型で開発し、アプリケーションの運用を行うとしている。 協業への参加について山崎氏は、「清水建設では、数年前からデジタルゼネコンを進めており、図面の情報や見積もりの情報、現場管理の情報をデジタル化し連携していた。しかし、最後に残った課題が工程表のデジタル化であった。その中で、NTT Comと竹中工務店が検討している話を聞き、今回の協業に参画した」と話す。また丁野氏は、「この協業は関係企業内にとどまらず、建設業界全体の付加価値の向上と魅力向上に貢献する取り組みである」とし、「この取り組みの成果は、オープンなソリューションとして広くサービス提供していく予定だ」と話した。
それではまた次回、K-blogでお会いしましょう。