和牛“密輸”横行の背景に政府の「縦割り」行政か 省庁たらい回しの挙句…【狙われた和牛】
7月28日テレ朝NEWSによると、今年2月以降、和牛をカンボジア向けと偽って、実際には香港に輸出したとして、男らが関税法違反・家畜伝染病予防法違反の疑いで相次いで逮捕された。 警察が容疑を裏付けるために利用したのが、国際コンテナ船の「輸送履歴」だった。ネット上でオープンになっているこうした情報をたどるなどして、和牛がカンボジアに届いていないことを突き止めたという。 だが、ある業者は言う。「日本政府がちゃんとしたルールを作れば、もっと簡単に不正輸出を規制できる」。 なぜやらないのか。我々の問いに対する政府の回答は、責任回避に終始する「縦割り」そのものだった。
■警察が着目した輸送履歴 捜査関係者「日本の権益を守るために…」
一連の和牛不正輸出事件の摘発を手掛けた神奈川県警国際捜査課
神奈川県警による不正輸出の一連の摘発は、和牛を積み込んだコンテナ船の「輸送履歴」を追跡したことで裏付けられたという。 コンテナには1つ1つに番号が割り振られていて、通常は、荷主などが「今どこにあるのか、予定通りに到着するのか」などを確認するために利用される。積み込まれた船のデータから、経由した港や最終的にどの港で荷下ろしされたのかまで確認することができる。 捜査関係者によると、和牛が東南アジア経由で中国に流れているのではないかという情報はこれまでもあったが、疑惑だけで裏付けは難しかったという。
そこで、一つ一つのコンテナの輸送履歴を洗い出した。その中で、「カンボジアに行っているはず」のコンテナが香港で下ろされていることが分かったという。 さらにこのコンテナの受取人として通関書類に記載されていた会社に警察は着目した。会社は、カンボジア・プノンペンにある日系企業だったが、調べたところ実態のない「休眠会社」だった。この休眠会社が記載されている過去の通関書類を改めて洗い直したところ、40億円を上回る不正輸出の証拠が見つかったという。 そして、6月末時点で、同じ手口を使って和牛を不正輸出したとして合わせて5人を逮捕、3つの会社を摘発した。 捜査関係者は、「警察だけの力じゃない。税関含め、日本の権益を守るために“現場”が部署の垣根を越えて団結した結果。不正輸出の首魁を捕えたことで、業界に“もう見逃さない”とメッセージを送れたはずだ。」と語った。 業界では「みんな分かっているけれど摘発されない」(国内の畜産業者)と言われ続けてきた第三国経由の密輸にメスが入った瞬間だった。
「輸送履歴を追跡すれば、和牛の不正輸出を防げるのではないか。」 私が取材を通じて覚えた素朴な疑問に対し、香港向けに和牛を輸出している畜産関係者がはっきりと言い切った。 「日本政府が本気で規制しようとすれば、ちょっとルールを変えるだけで簡単に網の目を狭められる。」 現時点で、農林水産省など行政側が、和牛の入ったコンテナを追跡するなど具体的な施策はとっていない。 だが、「今後、事後報告だけでも義務付ければ、不正輸出は格段に減るはずだ」とこの業者は教えてくれた。 例えば、カンボジアに輸出した業者が、事後であっても、「きちんとカンボジアに届けました」と報告しなければいけないルールにする。ちゃんと報告した業者には、次からもカンボジアへの輸出を認めるが、報告せずにいる業者は、その後、「カンボジアに和牛を出したい」と言ってきても、「前回の報告がなかったですよね」と断ることができるようにする。 うその報告をすれば、公文書偽造などの罪に問われることから、守ろうとする業者は増えるはずだ。 業者はぽつりと言った「日本政府は本気で取り締まる気がないんじゃないか」
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