8月16日福島民友によると、スイスとリヒテンシュタインは15日、2011年の東京電力福島第1原発事故後から本県など日本産食品に課してきた輸入規制を撤廃した。日本の農林水産省が発表した。
今月3日に撤廃した欧州連合(EU)と同様、福島など10県の一部食品を対象に求めてきた放射性物質の検査証明書の添付義務をなくす。これで輸入規制を維持するのは中国や韓国など7カ国・地域となる。
検査証明書が不要となるのは福島のほか、岩手、宮城、山形、茨城、群馬、新潟、山梨、長野、静岡の各県。一部の水産物や山菜類などが規制対象だった。
EUと同じ3日に撤廃したノルウェー、アイスランドと合わせ、欧州自由貿易連合(EFTA)に加盟する全4カ国が撤廃に至った。一時は55カ国・地域まで広がった規制は徐々に減り、生産者や輸出業者の事務負担の軽減が期待される。
福島県産品輸出に追い風
スイスとリヒテンシュタインが15日、東京電力福島第1原発事故に伴う本県など日本産食品への輸入規制を撤廃したことにより、欧州で規制を続けるのはロシアだけとなった。農林水産省は欧州の動きを踏まえ、生産者に情報提供などを行う「輸出支援プラットフォーム」を年内にもブリュッセルに新設する方針だ。9月には本県産食品などを現地でPRする機会を設け、規制撤廃を追い風に輸出拡大を図る。
県によると、2021年度の県産食品の輸出額はスイスが1300万円で、アルコール類と加工食品が輸出されたという。リヒテンシュタインへの輸出実績はなかった。
内堀雅雄知事は「欧州各国で輸入規制が撤廃されたことは今後の輸出拡大も含め、波及効果は大きい。引き続き、国と連携しながら科学的根拠に基づいた正確な情報や県産農林水産物の魅力を発信し、さらなる輸入規制撤廃へ取り組む」とのコメントを発表した。
野村哲郎農相は15日の閣議後記者会見で「被災地の復興を後押しするもので歓迎したい」と強調。引き続き規制を維持している国・地域に緩和を働きかける意向も示した。
輸入規制を維持しているのはロシアのほか、中国や韓国、台湾、香港、マカオ、フランス領ポリネシアの計7カ国・地域となる。このうち、中国は日本政府が計画する第1原発の処理水の海洋放出に反対。規制緩和とは逆に、日本産水産物の放射性物質検査を強化している。